全固体電池向け材料開発で、国内化学メーカーはどう差別化を図るのか?

BASF、IOPLY、ウェリオンは、次世代全固体電池バッテリーパック開発で協力協定を締結。BASFは非金属部品の材料開発、IOPLYは学術的サポートを提供し、ウェリオンが設計を主導。軽量化、熱マネジメント、高機能性を実現する材料ソリューションを基に、より安全で効率的なバッテリーパックを目指す。BASFは製品ポートフォリオを拡充し、新エネルギー車(NEV)市場でのリーダーシップ確立を目指す。

そこで今回は、「全固体電池向け材料開発で、国内化学メーカーはどう差別化を図るのか? 」という課題設定でシナリオプランニングを進めてみたいと思います。

 

シナリオ骨格

全固体電池向け材料開発における国内化学メーカーの差別化戦略を考える上で、2030年を想定した不確実性の高い外部要因を以下に示します。

  1. 全固体電池の技術成熟度と多様性: 電池の種類(硫化物系、酸化物系等)、電極材料(正極、負極)、製造プロセス等、技術の方向性が多様化し、どの技術が主流になるか不透明です。技術標準の確立が遅れる可能性もあります。

  2. 資源制約と地政学的リスク: リチウム、ニッケル、コバルトなど、電池材料の資源供給が不安定化するリスクがあります。特定国への依存度が高まれば、地政学的リスクも増大します。

  3. 競合の激化とサプライチェーンの変化: 海外メーカー(特に中国、韓国)の技術革新と市場参入が加速し、価格競争が激化する可能性があります。既存のサプライチェーンが大きく変化するかもしれません。

  4. 政策・規制の変化: 各国のエネルギー政策、環境規制、安全基準などが全固体電池の普及を左右します。補助金制度や税制優遇措置の変更も影響を与えます。

  5. 代替技術の台頭: 全固体電池以外にも、次世代電池(リチウム硫黄電池、ナトリウムイオン電池等)や水素エネルギーなど、競合となる代替技術が登場する可能性があります。

上記のうち、国内化学メーカーにとって特にインパクトが大きい要因は以下の2つです。

  • 全固体電池の技術成熟度と多様性: 国内化学メーカーは、材料開発において特定の技術に特化する傾向があります。技術の方向性が定まらない場合、投資判断が難しくなり、開発の遅れや資源の浪費につながる可能性があります。

  • 資源制約と地政学的リスク: 国内化学メーカーは、海外からの資源調達に依存している部分が大きいです。資源価格の高騰や供給途絶は、製造コストの上昇や生産計画の遅延を引き起こし、競争力を低下させる可能性があります。

これらの要因を踏まえ、国内化学メーカーは、技術動向の把握、サプライチェーンの多様化、代替材料の開発、リサイクル技術の確立など、多角的な戦略を検討する必要があります。

 

国内化学メーカーの未来予想図

シナリオA:技術革新と資源安定の好循環

2030年、全固体電池技術は、硫化物系を軸に標準化が進み、性能と安全性が飛躍的に向上した。日本ケミカルは、独自の硫化物系固体電解質材料の開発に成功し、高容量・高出力電池の実現に大きく貢献。同時に、政府主導の資源外交が奏功し、南米やオーストラリアとのリチウム資源確保に成功。安定的な資源供給体制を確立した。同社は、技術優位性と資源安定性を武器に、グローバル市場で圧倒的なシェアを獲得。EVメーカーやエネルギー貯蔵システム企業からの需要が急増し、業績は右肩上がり。社員たちは、クリーンエネルギー社会の実現に貢献しているという誇りを感じながら、活気に満ちた日々を送っている。

シナリオB:技術停滞と資源枯渇の悪夢

2030年、全固体電池技術は、酸化物系、硫化物系、ポリマー系など、技術の多様性が収束せず、標準化は頓挫。各社が独自規格の電池を開発し、コスト高と性能ばらつきが課題として残った。日本ケミカルは、硫化物系に特化した投資を行ったものの、酸化物系電池の台頭により、開発が遅れ、競争力を失った。さらに、世界的な資源争奪戦が激化し、リチウム、ニッケル、コバルトなどの価格が高騰。資源の安定供給が困難となり、製造コストが大幅に上昇。日本ケミカルは、価格競争に敗れ、業績は悪化の一途を辿った。リストラや事業縮小を余儀なくされ、社員たちは将来への不安を抱えながら、閉塞感に包まれた日々を送っている。

シナリオC:技術革新と資源制約の狭間

2030年、全固体電池技術は、硫化物系を軸に標準化が進み、性能と安全性が向上。日本ケミカルは、独自の硫化物系固体電解質材料の開発に成功し、高容量・高出力電池の実現に貢献した。しかし、世界的な資源争奪戦は激化の一途を辿り、リチウム、ニッケル、コバルトなどの価格が高騰。資源の安定供給が困難となり、製造コストが上昇。日本ケミカルは、高い技術力を持ちながらも、資源価格の高騰に苦しみ、価格競争で苦戦を強いられた。代替材料の開発やリサイクル技術の確立が急務となり、社員たちは、限られた資源の中で最大限の価値を生み出すために、日々奮闘している。

シナリオD:技術停滞と資源安定の皮肉

2030年、全固体電池技術は、酸化物系、硫化物系、ポリマー系など、技術の多様性が収束せず、標準化は頓挫。各社が独自規格の電池を開発し、コスト高と性能ばらつきが課題として残った。日本ケミカルは、硫化物系に特化した投資を行ったものの、酸化物系電池の台頭により、開発が遅れ、競争力を失った。一方、政府主導の資源外交が奏功し、南米やオーストラリアとのリチウム資源確保に成功。資源の安定供給体制は確立された。しかし、技術競争に敗れた日本ケミカルは、安定した資源を有効活用できず、資源を海外メーカーに供給する立場に甘んじた。社員たちは、技術革新の重要性を痛感しながら、現状打破を目指して、新たな事業戦略の模索に奔走している。

 

技術開発戦略

全固体電池向け材料開発における国内化学メーカーが、どのようなシナリオに直面しても一定のリターンを得られるようにするための技術開発戦略を以下に提案します。

1. 多様性に対応可能な基盤技術の確立

全固体電池の材料系は、硫化物系、酸化物系、ポリマー系など、複数の技術が存在します。将来的にどの技術が主流になるかは不確実であるため、特定の材料系に偏重せず、複数の材料系に対応できる基盤技術を確立することが重要です。

  • 共通要素技術の研究開発: 各材料系に共通する課題、例えば、電極と固体電解質間の界面抵抗の低減、イオン伝導性の向上、安定性の確保など、共通の要素技術に注力することで、どの材料系が主流になっても応用可能な技術を獲得できます。
  • モジュール化された材料設計: 材料を機能ごとにモジュール化し、異なる材料系に対応できるように設計することで、技術の変化に柔軟に対応できます。例えば、バインダーや添加剤など、共通して使用できる材料を開発することで、開発効率を高め、コストを削減できます。
  • 評価・分析技術の高度化: 様々な材料系の性能を正確に評価・分析できる技術を確立することで、将来的に有望な材料系を早期に見極め、迅速に開発に移行できます。特に、in-situ測定技術やAIを活用したデータ解析技術などを強化することが有効です。

2. 資源制約を克服する技術開発

全固体電池の材料には、リチウム、ニッケル、コバルトなどの希少資源が使用されます。これらの資源は、供給が不安定であったり、価格が高騰するリスクがあります。資源制約を克服するためには、以下の技術開発が重要です。

  • 代替材料の開発: リチウム、ニッケル、コバルトなどの希少資源の使用量を削減できる代替材料の開発を推進します。例えば、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウムなどの代替元素を活用した固体電解質や正極材料の開発が考えられます。
  • リサイクル技術の確立: 使用済み全固体電池から希少資源を回収するリサイクル技術を確立します。リサイクル技術を確立することで、資源の安定供給を確保し、環境負荷を低減できます。
  • 省資源化技術の開発: 電池の設計や製造プロセスを最適化することで、希少資源の使用量を削減します。例えば、薄膜化技術や高密度実装技術などを活用することで、電池の小型化・軽量化を実現し、資源の使用量を削減できます。

3. 高付加価値材料の開発

全固体電池の性能を最大限に引き出すためには、高付加価値材料の開発が不可欠です。

  • 高イオン伝導性材料の開発: 電池の出力特性を向上させるために、高イオン伝導性を持つ固体電解質材料を開発します。
  • 高容量正極材料の開発: 電池のエネルギー密度を向上させるために、高容量の正極材料を開発します。
  • 高安定性材料の開発: 電池の寿命を向上させるために、高安定性を持つ材料を開発します。

これらの技術開発を推進することで、国内化学メーカーは、全固体電池の将来のシナリオがどのように展開しても、競争力を維持し、一定のリターンを得ることが可能になります。

 

まとめ

今回は、国内化学メーカーの立場で、技術開発戦略について検討しました。戦略検討には、シナリオプランニングの検討ステップを予め組み込んだ専用の生成AIを構築。与えた情報は冒頭のニュース記事、立場、想定年のみで、あとはステップに従って結果が自動生成されています。

今回、各ステップは簡易的に行いましたが、重要なステップでは専門情報(あるいは内部情報)を与えるなどの調整を入れることで、生成AIでありがちな一般論を避けることができるでしょう。これにより、よりリアリティのあるシナリオを描くことができ、戦略の精度も上がることが期待できます。

クォークでは、生成AIを活用した客観性のある戦略プランニング、特定分野に専門特化した生成AIの構築など、企業のR&Dを情報面でサポートする取り組みを行っております。全国からのお問い合わせをお待ちしております。