ブレークスルーを担う人材の条件とは?

以前ご紹介した「新規事業の切り口を探索する」にて、パテント情報の引用関係を使って技術の応用展開の可能性を抽出しました。ご覧になってない方は、あらためてご確認ください。この引用情報を研究者に応用してみようというお話です。

引用情報をPosi(引用された=権利化を妨害した)とNega(引用した=権利化を妨害された)に分け、研究者ごとに集計します。例えば、Posiの多い研究者は、他者の研究を多く妨害した=影響力大、と想定できます。では実際の研究者を見てみましょう。

以下は、ノーベル化学賞の田中耕一氏の島津製作所時代のPosi Nega集計です。下の人物は、田中氏と直接関係のある研究者です。全体として数は少ないものの、Posiの数がNegaの数と同程度カウントされています。

次に、ノーベル物理学賞の中村修二氏の日亜化学工業時代のPosi Nega集計です。同じく下の人物は、中村氏と直接関係のある研究者です。全体として数も多く、やはり、Posiの数がNegaの数と同程度カウントされています。

絶対数については、対象としているテーマや、当時の状況によるのかもしれません。しかしながら、PosiとNegaの割合は、他の研究者に対してバランスがいい、つまり、妨害もされるが、同じくらい妨害していると言えます。

比較のため、大手企業(電機)から1社を選んで集計してみました。わかりやすくするため、比率に変換しています。上位20人ほどを確認しますと、Posiの割合は概ね3割ほどになっています。

ここで、1つの仮説として、優れた研究者はPosi(他者への影響力)の割合が5割かそれ以上が条件、と言えるかもしれません。上記企業にも、5割を超える研究者が確認できます。新規開発テーマに悩んでいる、自社のコア技術は何か?、もしそのような課題があれば、今回のような「人」を切り口にブレークスルーしてはいかがでしょうか。

尚、今回使った引用情報は、パテント情報の一部、いわゆる経過情報です。パテント情報は、様々な企業の開発情報が取れる反面、落とし穴もあります。次回はそのあたりについて、お話したいと思います。

今回の分析は、情報分析ツール「Quark Apps」を使っています。Quark Appsは、情報の自動収集、前処理、ビジュアル化、機械学習(AI)をExcelから操作できるようにした、Quarkオリジナルのパッケージです。