新規事業の相談をいただくと、技術が先か、マーケットが先か、鶏と卵、永遠のテーマにぶつかってしまいます。結局のところどちらも重要なわけですが、どちらかに決めないと、最初の一歩が踏み出せないということがあります。そこで、新規事業と言えども、まずは得意分野の周辺からということで、技術を軸にその活用先を探すやり方をおすすめしています。それでは、情報分析でどのように活用先を探索するかをご紹介していきましょう。
切り口を示す情報ソースとは?
技術情報として最も信頼のおけるものとして、パテント情報があります。例えば、J-PlatPatを使えば、無料で様々な情報を得ることができます。今回はJ-PlatPatを使って見ていきます。まずは番号検索やキーワード等で、目的のパテントを検索します。番号が分からない場合や、検索項目が豊富なキーワード検索が使いやすいのではなかと思います。
例えばこれは、楽天グループの電子マネーに関するパテント情報のトップ画面です。電子マネー、最近はだいぶ普及してきましたね。こちらの右上に「経過情報」というボタンがありますので、これをクリックします。
技術どうしの引用関係を利用する
基本情報はここで確認できます。出願細項目記事を見ますと、登録査定とありますので、このパテントは登録されている(権利として認められている)ということが分かります。
さて、基本項目の隣に「出願情報」というタブがあります。ここをクリックし、少し下へスクロールしますと、「引用調査データ記事」という項目があります。これは、パテントを審査する過程で、引用された文献番号が確認できます。ここで、拒絶理由通知というのは、列挙された文献を理由に、拒絶理由を通知したという記録です。つまり、過去のある時点で、文献番号XXXにより、このパテントは登録できませんよ、という通知をしたということです。
この内のひとつをクリックしてみます。すると、ある企業X社の自動販売システムに関するパテントだと分かります。これを言い換えると、ある企業X社の自動販売機に関する技術は、電子マネーのシステムに応用できるかもしれない、ということになります。技術と活用先がつながったわけです。
網羅的に探索する
パテント情報は整理された情報ですから、システムを使えば大量に処理することができます。概念的にはこのようなイメージです。技術から、活用先へ向いた矢印が出ていますが、これは、技術側が理由となって活用先側が拒絶となったことを意味します。この向きが重要です。この向きとなるように、情報処理するわけです。
実際のアウトプットがこちらです。ここでは、下半分にX社の要素技術として丸が表示されていますが、1つ1つを表示するとたいへん複雑になりますので、関わった開発者でひとくくりにしています。つまり1つの丸は一人の開発者です。上半分は、活用先を示す丸です。こちらは企業でひとくくりにしています。つまり、X社の開発者と、活用先となりそうな企業をつなげたマップになります。さらに、異業種を見つけやすくするために、業種別にグルーピングしています。パテント情報とファイナンス情報を組み合わせて処理しています。
人の名前と企業名、そしてそのつながりという情報に落ちていますので、具体的なアクションへすぐに移行できます。最終的にはひとつひとつ吟味する必要はありますが、新規事業の切り口を出す、網羅的かつ客観的な方法の一つとしておすすめしています。
今回の分析は、情報分析ツール「Quark Apps」を使っています。ご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。丁寧にご説明させていただきます。お問い合わせ