パテント情報の落とし穴

近年、欧米の先進企業において、パテント情報を活用した経営・事業支援の手法として「IPランドスケープ」が注目されています。しかしながら、今回は結論から申し上げますと、パテント情報には決定的にまずい点があります。それは、「情報が古い」ということです。

パテント情報は通常、出願から18ヶ月たたないと公開されません。これは、とくにテクノロジー企業においては致命的です。さらに、パテントが持つ経過情報を使って何らかの評価をしようとすると、より古い情報に影響を受けてしまいます。今回はそのあたりについてご紹介します。

経過情報を評価につかう

こちらは、企業X社の開発者ごとのPosi/Nega集計です。2017年から過去10年分を集計しています。Posi/Nega集計は各パテントの経過情報を使って評価しています。ここで、Posiが多いほど、他者への影響力が大きい開発者だと想定できます。Posi/Negaについて詳しくは、「ブレークスルーを担う人材の条件とは?」をご参照ください。

では、現在2019年、ここにランクしている開発者は、現在でも影響力はあるのでしょうか? いまX社が注力している、先端開発の中心人物なのでしょうか?

最新の事情は分からない

上記の集計結果をもう少し詳しく見ていきましょう。約5年ごとにスナップショットをとって、古い順に並べてみます。すると、情報が新しくなるにしたがって、Posiの数が減っていきます。2015年のスナップショットでは、Posiが一つもありません。

2001年
2005年
2011年
2015年

これは、経過情報、つまり時間が経過しないと付かない情報を使っているからに他なりません。これでは、古い情報ほど評価が高くなって、新しい情報はまったく評価されないことになってしまいます。仮に、土俵を揃えて(時間を考慮して)計算したとしても、新しい情報が評価されないことには変わりありません。

未来を描くには?

このように、パテント情報の活用には注意が必要です。上記のような分析は、企業の底力をはかるには良いでしょうが、最新の動向を探るには向いていません。つまり、目的に応じて情報ソースを選ばないといけない、ということです。

事業戦略を練るには、未来を描く必要があります。未来を描くには、情報、しかもできるだけ新しい情報が必要です。パテント情報は質の高い情報ソースですが、万能ではありません。政治、経済、社会、技術、できるだけ最新の情報をバランスよく集め、共有し、いちはやく行動に移す必要があります。本当に貴重な情報は、行動からしか得られないと私たちは考えるからです。

分析は、情報分析ツール「Quark Apps」を使っています。ご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。丁寧にご説明させていただきます。お問い合わせ