AIの進展、電子決済の普及、環境意識の高まり・・、様々な分野、業界でダイナミックに変化、革新しつつあります。世の中で言われる様々なトレンドに対し、自社はどう対応するべきか。あらゆる企業や個人が、前例の無い変革に見舞われたとき、いったい何から手をつければいいのでしょうか。
最終的にどう意思決定するかはともかく、まずは情報収集に動くでしょう。企業なら、先進的な企業はいったい何をやっているのか、あるいは、競合他社はどう動いているのか、これらを知った上で戦略を練るべきです。
そこで今回は、トレンドに対する企業の事例を効率よく収集する方法についてご紹介します。
企業の取り組みを効率よく収集する方法
関連する情報すべてに対し、企業名のタグを付けてしまいます。これによって、タグの無い情報を予め切り落とすことができ、特定企業の取り組みや事例といった情報のみを対象にし、効率よく分析することができます。
前回のブログでは、最新のニュース記事から、スタートアップ企業の情報を取り出すことが目的でした。この場合は、スタートアップ企業の名前自体が分かっていませんから、網羅的にテキストマイニングをかける必要がありました。
しかし今回は、情報の中に主要な企業名が含まれているかどうかを調べればよいので、例えば上場企業のリストを辞書に持っておけば、比較的簡単にタグ付けすることができます。
デジタルトランスフォーメーションの事例
それでは実際に、デジタルトランスフォーメーション(DX)に対する企業の取り組みについて、分析してみましょう。
まずは企業名の辞書をつくります。上場企業のリストを入手し、辞書に登録します。今回は、国内の主要企業を対象とし、東証一部上場かつ従業員3000人以上の752社を選定。さらに、グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル、マイクロソフトの5社を加え、757社を登録しました。
ただし、ノイズとなりそうな企業名、たとえば「コロナ」などの一般用語と同じ企業名を数件削除しています。本来は、日本電気とNECのように、英語表記も登録して漏れを無くすべきですが、今回はしていません。
次にニュース記事を収集します。今回は、(デジタルトランスフォーメーション AND 企業 AND 取り組み)の検索式で、300件超を対象としました。ニュース記事の収集は、弊社Quark AppsのCrawler機能を使っていますが、過去の記事にもあるとおり、Googleアラート+IFTTTでも自動収集ができます。
情報ソースは、新聞記事や雑誌、サイト情報など多岐に渡ります。例えば、PR Timesなどは、基本的に企業広告のため削除してもいいかもしれません。PR Timesは、対象記事の約15%を占めていますが、今回はそのままにしています。
これら記事のAbstruct(要約)に対し、先程の辞書をもとにタグ付けを行います。弊社Quark AppsのTag機能を使っていますが、ExcelのFIND関数などを駆使することでも可能です。
さらに、要約に対してテキストマイニングをかけ、キーワードを抽出します。これによって、企業とどのようなワードが結びついているかが分かります。タグ付けされた情報が少なければ、ざっとリストを見るだけでも、各社の取り組みが把握できるはずです。
数が多い場合には、可視化が有効です。タグ情報を可視化してみましょう。マイクロソフトと富士通の頻度が高いです。丸井グループといった、一見してITとは程遠い企業も見られます。
テキストマイニングの結果はこちらです。こちらは、企業名が含まれないよう、先程の辞書をストップワードに登録して実行しています。また、取り組みを想定しずらい一般的な用語もストップワードに登録したため、多様な用語がたくさん並んでしまいました。
さらに、企業とその取り組みを示すワードの繋がり(共起)を明らかにするため、クロス集計してみました。マイクロソフトが中小企業向けにDXを推進しているなど一部の予想はできますが、ワードが多すぎて、その他の企業を見るには複雑過ぎます。
そこで、企業とキーワードのネットワーク図を作成します。企業名を中心に、キーワードがつながっています。富士通、マイクロソフトをはじめ、ソフトバンク、東レ、丸井グループが目立ちます。DXのトレンドにおいて、どのような企業が中心的かを把握することができます。また、それぞれを細かく見ていくことで、各社の取り組みを示すキーワードを発見できます。
ここで、意外な企業である丸井グループに焦点をあててみましょう。デジタル、リアル、ブランド、接点、業務提携・・、とあります。顧客とブランドが直接つながるための、何らかの業務提携に関するニュースだと予想できます。ここに、デジタルトランスフォーメーションが絡んでいる。
元の記事からたどっていくと、丸井グループの完全子会社であるD2C&Co.の取り組みだと分かりました。D2C&Co.は、丸井グループが20年2月に設立した新会社で、今後3年間で30億円をD2Cブランドへ投資していくということです。多くの百貨店がマイナス成長に苦しむ中、丸井グループは、積極的にDXへ投資していく姿勢が見て取れます。
重要なのは業界の枠を超えた取り組み
いかがでしたでしょうか。自社を取り巻く業界、限定された視点では、本質は見えてこないかもしれません。重要なのは、業界の枠を超えた取り組み。これを知った上で、そのトレンドに対する自社ならではの解釈をすることです。そのトレンドに関する情報を、(業界問わず)企業の視点からとらえることで、効率よく選別し、かつ全体像を見据えた戦略構築、意思決定が可能になるのです。
今回の分析は、情報分析ツール「Quark Apps」を使っています。Quark Appsは、情報の自動収集、前処理、ビジュアル化、機械学習(AI)をExcelから操作できるようにした、Quarkオリジナルのパッケージです。