新規事業の創出や、次世代の成長戦略を考えるとき、多くの企業が「自社の強み」を軸に据えようとします。技術力に自信のあるR&D部門であれば、自社の「コア技術」を中心に戦略を検討するはずです。
しかし、現場のマネージャー層からは「そもそも、わが社の真のコア技術とは何なのか?」「定義が曖昧で、新テーマ創出に繋がらない」という声が多く聞かれます。
記事公開から時を経て、現在はAI(生成AI・機械学習)の活用により、この「コア技術の特定」と「用途探索」は劇的な進化を遂げました。今回は、技術経営(MOT)の視点に最新のデータサイエンスを掛け合わせた、戦略的な「コア技術」の考え方を解説します。

コア技術戦略のための「コア技術」とは?
コア技術戦略における「コア技術」の本質は、「自社内における用途展開の中心(ハブ)となっている技術」です。 ある技術が複数の製品や事業に展開され、自社の収益を支えているならば、それこそが持続的成長の源泉です。
ここで重要なのは、「技術は人に紐付く」ということです。 2026年現在のR&D戦略では、技術を単なるスペックの羅列としてではなく、「知恵を持つ集団のネットワーク」として定義します。このネットワークの構造を可視化し、中心となっている人や集団を特定すること。それが、客観的なデータに基づくコア技術の特定プロセスです。
コア技術の特定と新用途探索(AIによる可視化)
では、化学メーカーX社の分析例をもとに、具体的にどのように可視化するかを見ていきましょう。
① 開発者ネットワークによる「組織の心臓部」特定
下図は、過去20年分の技術情報から開発者の「つながり」を可視化したものです。丸の大きさは他者との接点の多さを示します。最新のAI解析では、ここに「技術の類似性」や「特許の引用関係」を重ね合わせることで「どのグループが次世代のコアを担っているか」をより高精度に判定できます。この例では、他グループと多様に繋がる「グループB」が、用途展開の鍵を握るコア技術グループであると分かります。

② 外部影響力(Posi/Nega)分析
次に、別の切り口から技術の「攻撃力」を評価します。他社技術への影響力が強い人物を特定します。例えば、グループBに属するS氏は、自社内のハブであると同時に、社外への影響力も極めて高い「真のキーマン」であることが分かります。

③ 生成AIを活用した「未知の用途」探索
特定されたコア技術をどう展開するか。かつては手作業だったリストアップも、現在はAIが強力にサポートします。S氏が持つ技術の影響先(攻撃先)リストをAIで解析することで、「自社の視界に入っていなかった競合他社」や「親和性の高い異業種市場」をシステマティックに抽出可能です。これにより、シーズ起点の用途探索に「意外性」と「網羅性」が加わります。

単なる用途探索では行き詰まる:未来シナリオとの融合
ただし、シーズ(技術)からの探索だけでは不十分です。R&Dマネージャーが陥りがちな罠は「ニーズ視点」の欠如です。真のコア技術戦略とは、「可視化された技術資産」と「未来シナリオ」をセットで考えることです。
- 未来の兆しを捉える: 生成AI等を用いてPEST分析やトレンド予測を行い、複数の未来シナリオを策定します。
- バックキャストで課題を抽出: その未来において必要となる技術と、現在のコア技術の「差分(ギャップ)」を算出します。
この「差分」こそが、今取り組むべき最優先の開発テーマとなります。
データ駆動型のR&D戦略へ
コア技術の特定から用途探索、そして未来シナリオとの合致。この一連のプロセスを客観的なデータで行うことが、新規事業の成功確率を飛躍的に高めます。
R&Dマネージャーの皆様へ 「自社の強みを再定義したい」「次世代の柱となる開発テーマが見つからない」といったお悩みに対し、私たちはデータとコンサルティングの両面からサポートいたします。
