コア技術戦略とは、人材戦略でもある【技術は人に紐付く】

たとえどれだけ強い技術を持っていたとしても、時代の流れとともに、いずれ陳腐化するでしょう。では将来にわたって、競争力を維持し、利益を出し続けるようなコア技術戦略とはどのようなものでしょうか。今回は、精密機器メーカであるO社(過去はカメラ、現在は医療機器が柱)を例に、考えてみます。

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コア技術戦略とは、人材戦略でもある

O社における5年前(2014年)の開発体制と、現在(2019年)の開発体制を比較したところ、コア技術を担っていると思われるキーパーソンに変化は無かったものの、取り組んでいるテーマやアプリケーションが変化していることがわかりました。つまり、同じ人物が、時代や状況の変化に適応しているようにみえるということです。時代の変化に合わせて、テーマも人も変わるのかと予想しましたが、そうとも言えないようです。

コア技術戦略を考える場合、技術そのものに目が行きがちですが、むしろ現在コア技術を担っている人材を、時代に合わせてどう導いていくべきかを検討することが、コア技術戦略であり、人材戦略でもあると考えます。

精密機器O社の開発体制

こちらは5年前のO社の開発体制です。一つの丸は一人の開発者、丸の大きさは他者とのつながりの数に比例、つながりの密度を計算しグループ化までしています。詳しくは過去の記事をご参照下さい。画像処理関連のグループが最大となっており、このグループのキーパーソンは野中氏、順キーパーソンは佐藤氏とわかります。その周りに、医療機器関連のグループがあって、画像処理関連グループと、わずかに関連を持っていることがわかります。

2014年前後の開発体制

当時、画像処理関連グループで、どのような開発が取り組まれていたのでしょうか。例えば下のような、スマートフォンと連携するレンズ型カメラです。縮小するデジカメ市場に抗おうとする、苦しい状況が見えてきます。

2014年前後の画像関連技術の例

また、外部連携については、大学とのわずかな連携と、国立循環器センターとカテーテル関連技術で連携が見られます。

2014年前後の外部連携

一方こちらは、現在のO社の開発体制です。最大グループはやはり画像関連グループで、キーパーソンも野中氏となっています。5年前と大きく違うのは、このグループと、他グループとのつながりの多さです。画像関連技術が、他の医療関連技術へ多様に展開されていることがわかります。野中氏を中心としたグループに大きな変化はないものの、用途展開がうまくいっているように見えます。

2019年前後の開発体制

それと同時に、技術内容にも変化があります。5年前は、あくまでもデジカメ関連技術でした。ところが現在は、例えば下のような、ドローンやロボットのような移動型の撮影装置であったり、医療機器の画像学習の仕組みといった内容です。

2019年前後の画像関連技術の例1
2019年前後の画像関連技術の例2

また外部連携でも、鹿島建設と建築物の検査といった、意外な動きが見られます。更に新しい展開を模索しているのでしょうか。

2019年前後の外部連携

技術ばかりを見てはいけない

さて、技術を強みとして競争優位を築きたいなら、技術をばかりを見ていてはいけないという、逆説的な結論となってきました。必要な技術は、時代や状況で変化します。その度に、付け焼刃的に取り入れた技術や能力は、コア技術と呼べるほどに対応力・応用力があるのでしょうか。様々な用途に展開できる柔軟性が、コア技術と呼ぶにふさわしい能力であって、これは人に紐付くものなのです。

したがって、コア技術戦略とは、そういった柔軟性のある人材を流出させず、いかに継承し展開していくのかを経営課題としてとらえること、人材こそ最も重要な経営資源、戦略であると考えるべきではないでしょうか。

今回の分析は、情報分析ツール「Quark Apps」を使っています。組織マネジメントやヘッドハンティング等にも応用可能です。ご不明な点がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせ下さい。お問い合わせ