最新の技術動向を調査する方法とは

アプリケーションの動向が分からない。アプリケーションの最新情報や動向が手に入らないか。もしあなたが、材料開発を担当する川上のエンジニアだとしたら、そう考えたことはありませんか?

そこで今回は、最新の技術動向を調査する方法、とくに化学メーカーのような川上のエンジニアが、市場や顧客に近い最新の情報や動向を得るための方法について考えてみたいと思います。

最新の技術動向を調査する方法とは

最新の技術動向を調査するために重要なポイントは2つあります。一つは、当たり前ですが、できるだけ最新の情報ソースを使うこと、もう一つは、中心となる組織や人物に着目することの2つです。順に説明します。

まずは最新の情報ソースですが、できれば一次情報が理想です。例えば、営業サイドから上がってきた情報です。アンケートや展示会などのマーケティング情報も有用です。しかしながら、ここから得られる情報が、アプリケーションの情報かと言えば、必ずしもそうではありません。

そこで候補に上がるのは、国際カンファレンスなどで発表される技術情報です。例えばIEEE Xploreでは、今年の1月に発表された内容が、3月にはデータベースに登録されています。発表からわずか2ヶ月弱で、アクセスできるようになります。

例えば半導体関連技術のような先端開発なら、公開されるまでに時間がかかるような情報ソースでは、完全に出遅れてしまいます。古い情報を使って、既に顕在化した動向をなぞっても、時間の無駄ですね。

次に、中心となる組織や人物に着目する意味ですが、これは情報に対する重み付けの意味合いです。情報が最新であればあるほど、その情報に対して重み付けとなるような経過情報が付きません。経過情報とは、例えば引用回数などの時間経過に伴って付加される情報です。したがって膨大な情報から、何をもって重要と判断するか、その拠り所が必要です。

中心組織や中心人物は、その周りに多くの組織や人物が繋がっているという点で、一定の重みが期待できそうです。幸い、文献に記載されている情報から、情報処理によって中心を割り出すことが可能です。これは、経過情報と違って、どれだけ新しい情報でも同じように処理できます。半導体技術を例に、実際にやってみましょう。

ヘテロジニアスインテグレーションの最新動向

IEEE Xploreを情報ソースに、半導体の最新トレンドを分析します。検索ワードは「ヘテロジニアスインテグレーション」を選びました。約2000件の文献情報をダウンロードし、まずはどのような企業や組織が関わっているかを調べます。図は、所属情報の中にある企業名や組織名を抜き出し集計したものです。Franhofer, Imec, Intel, IBM, TMSCなどがランキングされています。

ヘテロジニアスインテグレーション関連文献数

次に、これらの企業や組織が、どのようにつながっているかを調べます。1つの文献の所属情報に、同時に出現した企業や組織はつながっている(共同開発している)と考えられます。これを可視化し、2020年前後で比較してみます。2020年より前では、FranhoferやImecのような研究機関を中心に研究開発が進められています。対して2020年以降は、IBMやAMD、Nvidiaなどの企業が中心となって研究開発されていることがわかります。

直近の中心組織であるIBMについて、さらに調べていきましょう。IBMが関わっている文献だけに絞って、その研究者のネットワークを見ていきます。図の丸の大きさは、他の研究者とつながりの多い研究者を示しています。また、つながりの境界でグループ化しています。左側の最大グループについて、さらに見ていきましょう。

IBMが関わっている文献の研究者ネットワーク

拡大図から、開発の中心人物は、K.Sikka氏やK.Sakuma氏であることが分かります。さらに、これらの人物が関わっている文献だけに絞ってテキスト分析をかけると、どのようなテーマや課題に取り組んでいるかが分かります。例えば、K.Sikka氏ならパッケージ内のサーマルマネジメント、K.Sakuma氏なら信頼性と表面処理やラフネスといった具合です。

IBMが関わっている文献の研究者ネットワーク拡大(テキスト分析付き)

このように、半導体の微細化限界を打破するヘテロジニアスインテグレーションは、2020年を境にFranhoferなどの研究機関から、IBMを中心とした企業へ降りてきた。さらにIBMが関係する研究開発における中心グループ、さらにその中心研究者はK.Sikka氏やK.Sakuma氏であり、そして彼らの課題は、パッケージ内のサーマルマネジメント、あるいは信頼性と表面処理やラフネス、ということが分かりました。(彼らの文献を読めば、さらに詳細な技術内容が分かります)

マクロ分析は役に立たない

技術動向調査と称し、単に文献数を集計し、ぼんやりしたワードを抽出したようなマクロ分析では、川上のエンジニアはどうしていいか分かりません。抽象的な内容では、具体的なアクションが取れないのです。どこの誰がどのような技術課題に取り組んでいるか。そのくらいピンポイントに突き詰めないと、具体的なアクションは取れません。そしてこの「どこの誰」は信頼に値するのか。それが客観的に示せることが重要です。

できるだけ最新の情報ソースで、情報処理によってキーパーソンを特定する。キーパーソンに絞って情報を追うことで、信頼度と具体性を両立し、より価値の高い情報を得ることができます。戦略や開発の方向性を出すのに、情報を網羅する必要は必ずしもありません。むしろ情報を削ぎ落とし、本質を外さない情報分析の方法が必要です。皆さんと一緒に、考えていきたいと思います。

今回の分析は、弊社情報ツールQuark Appsを使っています。Quark Appsは、クローラー、RPA、テキスト分析、つながり解析、機械学習など、社内外のデータ活用に必要な機能がパックになっています。使い慣れたExcelから操作でき、クラウドを使わないため情報漏えいの心配もありません。全国からのお問い合わせをお待ちしております。