【新型コロナ】感染拡大防止には若い人の早期隔離が有効(データ分析)

緊急事態宣言の延長が決まったようです。三密を避け、リモートワークで外へ出るなと、一年もこのような状態が続いています。もう、そろそろ限界です。新型コロナウィルスの変異、ワクチンの遅れもあり、仕方がないのでしょうか。医療崩壊を避けるためにも、もっと積極的な対応は取れないものか。そこで今回は、愛知県が公表している発生事例データを使って、考えてみたいと思います。

感染拡大防止には若い人の早期隔離が有効

感染拡大の「拡大」には2つの意味があります。ひとつは感染者数を増やさないこと、もう一つは感染地域を広げないことです。今回のデータ分析で分かったことはいくつかありますが、地域を跨ぐ感染には、若い人が関わっていることが圧倒的に多いということでした。これは若い人の方が活動的だろうということで容易に想像がつきますが、データでも示された形です。したがって感染地域を広げないためには、若い人を中心にPCRを徹底し、感染があれば早期に隔離することで一定の効果が期待できるのではないでしょうか。

愛知県内の新型コロナ発生事例

それでは、実際のデータを見ていきましょう。
使用したデータは、愛知県新型コロナウイルス感染症対策サイトの「愛知県内の発生事例」から抜粋しました(2021/5/1〜5/5の感染者リスト)。データはPDFですが、いったんWordで読み込んで、これをExcelに貼り付けてテーブル化しています。Wordを介すことで、PDFのテーブルをきれいにExcelへコピーできますので、ぜひ試してみて下さい。

さて、ここから感染者のネットワーク図を作成していきます。ツールは、弊社のQuark Appsを使います。まず、データのゴミを取り除いておきましょう。接触状況列の「No.」や「と接触」などは、データ分析では不要ですので一括削除します。そして、NodeXL連携機能を起動し、感染者及び接触者の2列を指定して処理を実行します。処理が終わると、この期間の感染者のネットワーク図が生成されます(単独感染者は非表示)。

処理の実行画面
感染者のつながり

図が複雑なので、ネットワークの切れ目でグループ化の処理をします(クラスタリング)。すると以下のとおり、いくつかの比較的大きなクラスターと、複数の小規模クラスターに分かれました。ネットワーク図にしたことで、クラスターの中心人物がはっきりします。各クラスターはスター型のネットワークを持っていて、それほど複雑ではありません。したがって、この期間では二次感染はそれほど多くないということです。

感染者のつながり(ネットワークの切れ目でグループ化)

拡大してみます。管理No.表示、年齢性別表示、地域表示など切り替えながら見ていきます。若い番号ほど、過去の発生事例です。矢印は過去から現在へ向いています。過去から現在へ何段もつながっているほど、二次感染が繰り返されているということです。また、高齢者から若い世代への感染もあります。逆に、若い世代から高齢者への感染もあります。また、クラスター内の居住地は概ね同じですが、一部異なる居住地も含んでいます。

患者No.表示(左)、年代性別表示(右上)、居住地表示(右下)

ここで、左上の最も大きなクラスターを見てみましょう。中心人物は70代の女性ですが、幅広い世代の女性へ感染を広げています。しかし、居住地で見ると、名古屋市に限定されています。ここで、ひとつ仮説が浮かびます。地域を跨ぐ感染拡大に、高齢者はあまり関与していないのではないかという仮説です。

年代性別表示
居住地表示

今度は、ネットワーク図を居住地ごとにクラスタリングしてみましょう。以下は、各クラスターの配置を調整し(Fource Layout)、クラスター間のつながりを強調した図です。これによるとやはり、都市部(名古屋市)から放射状に他地域へ広がっているように見えます。また、県外(岐阜、東京など)も、感染拡大に関与しているように見えます。

感染者のつながり(居住地でグループ化)

さらに年代別に見てみます。まず、10代と20代の感染を赤く強調してみます。名古屋市と各地域のつながり(エッジ)が赤く強調されています。地域を跨ぐ感染拡大は、若い世代が関与していることが分かります。一方、70代以上を強調した場合を見てみると、明らかに、感染者は同一地域に留まっています。両図を比較すると一目瞭然です。

10代20代を強調
70代以上を強調

データにもとづく戦略的な対策を望む

以上のデータ分析から、地域を跨ぐ拡大には若い人の早期隔離を、感染者数の拡大には高齢者のクラスター対策を集中的に行い、両面から拡大を阻止していく対応が有効ではないでしょうか。ただし、このような分析を行うには、感染状況が機械可読性の高い形で電子化されている必要があります。感染拡大の実態を詳細に把握し、戦略的に手を打っていることが、はっきりと分かる形で報告されることを、私たちは望んでいます。少なくとも、データの標準化と蓄積は進んでいると信じたいものです。

今回の分析は、情報分析ツール「Quark Apps」を使っています。情報の自動収集、前処理、ビジュアル化、機械学習(AI)をExcelから操作できるようにした、Quarkオリジナルのパッケージです。