デジタルトランスフォーメーションとは具体的にどのような取り組みなのか、この波に乗り遅れてはいけない、そう考える経営者、経営層の方は多かと思います。いったい何から始めればいいのか。まずは他社の事例を参考にしたいと思うでしょう。そこで今回は、デジタルトランスフォーメーションの具体例に迫る方法について、考えてみたいと思います。
DXの具体例に迫る方法とは
抽象論でなく具体例に迫るのであれば、やはりテクノロジーの切り口(例えば特許や論文)から、情報を集めることをおすすめします。なぜならDXは、何らかの形でテクノロジーが絡んでおり、従来の非効率を解消したり、かつてない付加価値を生み出す取り組みだからです。
しかしながら、テクノロジーだけの視点では、単に技術調査になってしまうので注意が必要です。可能なら、ビジネス的な視点も組み合わせながら、情報を分析できるとよいでしょう。例えば、どのような企業の取り組みなのか、企業連携はあるか、どのような業種なのか、企業規模はどのくらいか、そのような視点も交えながら、テクノロジーを見ていきます。
このようにしてDXの具体例に迫ることによって、自社でも同様の課題はないか、自社ならどういう解決手段が取れるか、自分の業界で通用するのか、誰と組むのがよいのかなど、検討する上での起点を持つことができます。
DXに関する国内の企業連携
それでは実際に分析してみましょう。
DXに関連する国内の技術情報、最新の1万件を対象にします。1つ1つのテクノロジーを見る前に、まずは企業ごとに見ていきます。さらには、企業どおしの連携に着目します。なぜなら、ITとは縁遠い企業が、ITが得意な企業と共同でDXを実現する、というストーリーが見えるからです。
以下は、対象から抜き出した企業とそのつながりを描画し、つながりの密度をもとにグループ分け(クラスタリング)したものです。いくつかの大きな企業グループと、複数の小さい企業グループが分かります。
こちらは四角の部分を拡大した図です。トヨタを中心とした自動車関連企業の連携のようです。このように、勢力の大きいグループを特定し、グループ単位で細かく見ていく方法もありますが、今回は、ビジネス的な視点を入れていきましょう。
特許や論文のような技術情報と、上場区分や業種などの企業情報を、企業名を主キーにして連携させます。これによって、技術情報だけでは不可能なグループ分けが可能になります。
データ連携をして後、再度グループ化したものがこちらです。今回は「業種」でグループ分けしていますが、データ連携してあれば、「上場区分」や「売上」「利益」「従業員数」など、他の切り口でも簡単にグループ化できます。ここで、中央の四角で囲っている部分は、非上場企業や大学などで、その外側に、上場企業が業種ごとにグループ化されています。多くの企業連携が、この非上場企業を対象にしたものですが、今回はここは置いておいて、上場企業どおしの連携について見ていきます。
以下は、上場企業だけを表示したDXに関する企業連携図です。繰り返しになりますが、技術情報をもとに企業連携図を書いて、企業情報をもとに業種ごとにグループ化しています。ここでまず言えるのは、上場企業に限ると、同一業種内での連携はほとんどなく、異業種間での連携がほとんどだということです。また、予想通り、情報通信企業や電気機器企業が、他の多くの業種と連携しているということが分かります。ただし、そうでないケースもあります。例えば、建設業とサービス業、卸売業と化学、・・。その他製品(印刷)と機械、つまり、凸版印刷とサトーフォールディングスの例では、個人情報に配慮しつつ、ユーザ嗜好にマッチしたプロモーションを、梱包上に印刷する技術のようです。これまでの流通を大きく変えることなく、付加価値をのせています。
異業種との連携がカギか
いかがでしたでしょうか。今回は上場企業のみの分析となりましたが、DXの具体例に迫る場合、3つの視点がありそうです。1つは、情報通信企業との連携(効率化)、2つ目は異業種との連携(付加価値)、3つ目は非上場あるいは大学との連携です。3つ目については、どのような目的が考えられるのか、次回以降に深めていきたいと思います。
今回の分析は、情報分析ツール「Quark Apps」を使っています。情報の自動収集、前処理、ビジュアル化、機械学習(AI)をExcelから操作できるようにした、Quarkオリジナルのパッケージです。今回のような異なるデータどうしの連携も、数ステップのかんたんな操作で実現できます。